ヒトの目、驚異の進化
この本では4つの「なぜ?」に軽快なトークを交えながら答える構成となっている。
なぜ人間には色付きでものが見えるのか?なぜ人間の目は前向きについているのか?なぜ人間は目の錯覚を起こすのか?なぜ文字は現在のような形をしているのか?
著者によれば、それらの疑問に対する回答は以下の通りだ。
色覚を持つのは肌の色の変化を通して他者の感情や状態を察知するためであり、目が前向きについているのは両目の視野によって障害物の先を見通すためであり、目の錯覚は現在を知覚するために未来を見通そうとするためである。そして最後に、文字が現在のような形をしているのは我々が自然を見るのを得意としているためである。
驚くべき視覚能力そして文字を通して、あなたはまさにこの本を、そしてこのクソブログを読めることができるのである。
ネタバレに配慮した内容だとこのくらいの説明が限度である。
おもしろかったところ
この本の最も革命的なポイントは後半の第三章と第四章の内容であろう(そして第四章は訳本として最も読みづらい)。
なにせ、数ある錯視現象を統一的な一つの理論にまとめあげ (第三章)、世界の文字がじつはまったく同じ要素から成り立ち、同じ一つの原理に従っていること(第四章)を大胆に指摘しているのだから。
しかし、それらの刺激的な内容や証拠の数々は本を直接“目”にしていただくとして、ここでは個人的に興味深かったところを挙げさせてもらおう。そう、隙あらば自分語りの精神だ。
第二章では、「目の前にペンを持って→右目で見るとペンの向こう側が見えない→両目で見るとペンの向こう側が見える」という体験型アトラクションが出てくる。読者を楽しませるこの本の素晴らしい点の一つなのだが、私は『ウルトラマンを横になりながら見続けたせい(母親談)』で内斜視となっており、この手の現象を体験できたことがない。
効き目(右目)のみで景色を目にするので、右目で見た後に両目で見ても景色は変わらない(うまいこと両目の視野が統合されない)。ゆえに昔流行ったマリオの飛び出す絵本でもマリオやピーチ姫が飛び出したことはないし、3D眼鏡をかけるとひたすら赤と青がごちゃごちゃした景色が見えるだけであった。
私の透視能力は、バルタン星人の宇宙船を透視するウルトラマンに奪われてしまったのだ。