イギリスに留学してた。たった4か月の滞在期間だったが、色々と人に話すネタがあった。
あったのだが、(某ウイルスにより)人に披露する機会に恵まれなかったので、最近どんどん忘れていってる。
このまますべてを忘れていくのはもったいないので、ここに書き記しておく。時系列は思い出した順なのでめちゃくちゃだ。
イギリスではタンさん(仮名)という中国人女性がホストをしてるお家に滞在してた。Airbnbで予約した。Airbnbはすげー便利なんだけど次に使うのはいつになるやら…。
それはさておき、タンさんの家には3部屋ほど貸し出している部屋があり、そのうちの一部屋を2ヶ月ほど借りる契約をしていた。「ホストと馬が合わんかもしれんし」と保険をかけたつもりで実際の滞在期間(4ヶ月)よりも短めに予約したんだが、タンさんとめちゃくちゃ仲良くなった。うちの母親の年齢と同じくらいの女性やったので、多分僕のことを本当の息子と思って接してたんじゃないかな?(自意識過剰)休日は二人でランチ(たまにタンさん手作りの!)を食べながらクイズ番組見てキャッキャするぐらい仲良くしてた。
ほんとのところいうと番組はすべて字幕なしの英語だし英国の常識問題?みたいなのが出てて全く中身はわかんなかった。ルールも分かってなかった。多分クイズに正解したらお金がもらえるんだと思う。くそでかコインゲームみたいなのも出てきてたけど多分コインがいっぱい落ちるとよかったんだと思う。テレビで行われてる真面目そうなおじさんと神妙な面持ちでファイナルアンサー(死語)的なことを出演者が言ってる謎の番組に対して「こんな簡単な問題もわからんなんて愚かなやつだよほんま」とか言ってるタンさん。
そして何にも理解してない僕はタンさんに「確かに(yeah…)」と多分問題なさそうなタイミングで相槌うつだけの仕事をしてました。英国留学中は英語力のあまりのなさに「yeah」だけで乗り切ろうとしてました。
何回か「いや今質問したんだけど…」という顔をされることもありましたが(特にロンドン大学で)、yeah.
ディナーも時間があえばタンさんと一緒にテレビ見ながら過ごしてた。週に一度、タンさんお気に入りのダンス番組があって男女のペアがダンスを披露して毎週1グループずつ落ちていくダンスバチェラーみたいな番組見てた。タンさんはダンスが好きらしく、それをおれとやんややんや(おれはほぼyeah)言いながら見るのが週に一度の楽しみのようだった。ダンスはいい。ただ黙って見て分かったような顔して頷いてればいいのだから。あと上手い人ってなんかこう指先までピッ!となっててわかりやすいよね。
ある日タンさんはダンス熱がえらいことになりすぎてその日のタンゴを踊るペアに悪態をついていた。
「全然なってないね!いいかい、shushi!タンゴっつーのはこう踊るのよ!」と突然席を飛び出しひとり踊り始めるタンさん。困惑するおれ。なんならリズムを口ずさみながら踊り続けるタンさん。タンさんのタンゴを前にしてもいまいちタンゴにピンと来ないおれ。しかしどうやら踊り終わったタンさん。とりあえずおれは「いよっ!」って言っといた。なにがだ。思わず飛び出たjapanese誤魔化しtradition。
そんなこんなでめちゃくちゃタンさんに気に入られたので「残りの2ヶ月はAirbnbを介さずに直接やり取りしよう、さらに割引もかけてあげるよ!」と言われてもう最後まで住んでた。タンさんサイコー。3ヶ月目からはairbnb上では滞在が済んだことになるのでレビューを書いた。もちろん最高点を書いておいた。
タンさん「Shushi、レビューはどんな風に書いたの?」
わい「そりゃもう素晴らしい場所です、超おすすめ(本心)って書いたよ」
タンさん「good!!!」
あの時の笑顔は今でも鮮明に思い出せる。思い出せるけどほんとに「good!!!」って言ったかどうかに関しては自信がない。なんて言ってたっけ?
めっちゃ親指立ててめっちゃ笑顔でピシーッと全身決まってたんだけどなんて言ってたっけ?どうしよう「ほんとはそんなに印象なかったんちゃう?」って思われちゃう。信じてくれ。どこか恥ずかしさを感じながらも満面だった彼女の笑顔は本当に今も覚えてるんだ。
ただあの言葉を、あのとき彼女が口にした言葉を、僕は今でも、探しているんだ。